当院での再生医療の応用について
「再生医療」と言うと、〝iPS細胞〟などの名前が思い浮かぶと思います。
再生医療には、細胞培養によって作られた「細胞」を使う再生医療と、細胞培養の過程で作られる細胞を培養するための「培養液」を使った再生医療があります。
再生医療で使われる細胞の一種に、「幹細胞」がありますが、この幹細胞を細胞培養する時に作られるものを「幹細胞培養上清液」と言います。
当院で行っている再生医療の応用は、「幹細胞培養上清液」を使った治療法です。
幹細胞培養上清液のお話の前に、〝幹細胞〟について少し説明します。
幹細胞とは、体の中でまだ役割が決まってない元の細胞で、様々なある特定の役割を持った細胞に変化(分化)する細胞です。
幹細胞には、元々体の中にある体性幹細胞と、ES細胞やiPS細胞など人工的に作られた幹細胞があります。
体性幹細胞には、骨髄の中の造血組織、骨髄や脂肪組織、歯髄、胎盤など幅広い組織に存在して、造血幹細胞や脂肪細胞、血管、神経、筋肉、軟骨、皮膚などの細胞に分化する間葉系幹細胞があります。また、脳の中に存在する神経幹細胞もあります。
人工的に作られる、iPS細胞やES細胞については、少し複雑化するので、このコラムでの説明は割愛させて頂きます。
「幹細胞培養上清液」とは?
細胞を培養する時に必要な液体を細胞培養液と言います。
幹細胞培養上清液は、幹細胞を培養した後の幹細胞以外の〝上澄み液(上清液)〟です。
この上清液には、幹細胞が培養され増殖して行く過程で作り出す、細胞が成長したり、細胞同士の情報を伝達するための多くの因子が含まれます。
上清液には次のような代表的な成分の他、数百種類の多くの成分が含まれます。
EGF:上皮細胞成長因子
TGF-β:トランスフォーミング成長因子
TGF-α: トランスフォーミング成長因子
IGF-1: インスリン様成長因子
PDGF: 血小板由来成長因子
V#GF:血管内皮細胞成長因子
主に、これらの成分によって確認できている効果として
- 抗炎症作用
- 創傷治癒作用
- 組織・神経修復作用
- 免疫調節作用
- 血管再生・血管新生作用
- 抗酸化作用
などが上げられます。
以上のような上清液に含まれる成分の作用から、実際の臨床で応用され一定の効果が認められている疾患として、次のような疾患があります。
(ヒト、動物両方含む)
- 脊髄損傷
- 末梢神経疾患
- アルツハイマー病
- 腎不全
- 糖尿病
- 骨関節疾患
- 脳梗塞
- 心筋梗塞
- 糖尿病
- 低酸素脳症
- 肺疾患
- 関節リュウマチ
- 皮膚疾患
ここで、おそらく疑問と思われる、「幹細胞療法」と「幹細胞培養上清液療法」の違いについて説明いたします。
幹細胞療法
人や動物の体は、病気やケガで損傷した細胞を幹細胞が見つけだして修復したり、新しい組織と入れ替えたりしています。古くなった細胞も同様に入れ替わっています。
病気で生理的機能や免疫力が低下したり、ケガの損傷が大きい場合、この修復が十分に働かいない場合があります。
幹細胞療法は、自分自身の幹細胞や人工的な細胞(ES細胞やiPS細胞)を体の外で細胞培養によって増殖させた細胞を、体に戻すことにより、病気や損傷を回復させるという治療です。
幹細胞療法も、多くの効果が示されていますが、自身の幹細胞を培養する場合、組織の採取から培養、体へ戻すまでの過程に時間を要し、かつ煩雑になります。また、その分のコストがかかります。
(動物薬として製品化された培養細胞がありますが、その使用にはいくつかの制約があります)
幹細胞療法は、副作用の可能性や課題もあります。
特にiPS細胞については、夢のような画期的な治療法として注目されていますが、現時点でも道半ばであり、課題が山積しています。
幹細胞培養上清液療法
培養した幹細胞そのものを体に入れることはありません。
前述した様に、培養が完成した細胞とは別に取り出された上清液を製剤化して、病状に応じて、点滴や注射、点眼薬や噴霧などの外用として使います。
幹細胞上清液は、幹細胞の製剤化と同様に厳密な管理の下で行われる必要がありますが、製造から患者へ投与されるまでの過程は、細胞を採取するための患者の負担が無いことや、幹細胞療法に比べて手間が少ないためにその分のコストも抑えられる事になります。
幹細胞培養上清液療法は、幹細胞療法と比べて副作用の問題などがほとんどなく、また幹細胞療法と同等の効果が見られることが確認されています。
(自己以外の蛋白を上清液として投与するために、アレルギー反応の注意は必要です)
幹細胞上清液には、培養する幹細胞の種類によってその効果に違いがあることがあります。
幹細胞培養上清液には、脂肪由来幹細胞、臍帯由来幹細胞、歯髄由来幹細胞、また骨髄や羊膜由来の幹細胞といった、培養する幹細胞によって、その上清液に含まれる上記に示した成分が異なり、効果にも違いが見られます。
当院では、人の大学病院でのデーターの蓄積が多く効果が高いと考えられる幹細胞の培養上清液を主に使用しています。
幹細胞培養上清液療法の注意点
上清液の投与を受ける動物にとっては、非自己や異種のタンパク質が体の中に入ることになります。そのため、稀にですがアレルギー反応が出る可能性があります。
大学病院でヒトに投与されているものと同等に作られており、安全性が十分に確認されていますが、未承認医薬品に該当する製剤となります。
前述したように幹細胞培養上清液には、体を修復させるための成分が含まれていますが、自力では進まない回復力を促したり、回復を補助したりするための製剤です。
万能薬ではありません。
また、同じ様な病名について使用した場合に、年齢や病状、基礎疾患などの違いにより、効果に差が見られる事があります。
幹細胞培養上清液の治療の対象となる疾患は、椎間板ヘルニアや脊髄損傷などの急性的な疾患の他、慢性腎不全や慢性腸症、慢性皮膚疾患など比較的経過の長い病気が多くなります。
そのため、現在までの治療経過を踏まえた上で、幹細胞培養上清液の使用を考えて行きます。
費用について
費用については、動物の大きさ、病状、また、ご家族のお考えやご希望等によって変わってくるため、診察をさせて頂いた上で、ご説明いたします。
