VETERINARY MEDICINE

中獣医学診療

鍼灸治療

基本的には人の鍼灸治療と同様です。
使う鍼やお灸も、同じものを使用します。
ただし、「出来るだけ動物が嫌がる治療はしない」事が前提となるため、それぞれの動物にあった、鍼治療やお灸の施術を行います。
また、お灸などは、お家でのセルフケアが可能な場合、お家でも施術が可能な「棒灸」を使った方法で、ご家族にお願いすることもあります。

鍼灸治療の流れ

Flow01診察

  • 望診(視診)
    • 眼の力、動作、鳴き声 
    • 被毛の艶、密度、色合い、皮膚の乾燥、脂っぽさ
    • 体型、姿勢
    • 耳、鼻、唇・歯
    • 眼診
    • 舌診
  • 問診
    • ご家族から通常診療と同様に、元気食欲、便や尿の状態の他
    • 暑がりや寒がり、興奮しやすいかおとなしい、睡眠の状態など
  • 聞診(聴診含む)
    • 呼吸の状態や心音など
    • 口臭や体臭、便や吐物の臭いを確認することも、中医学では聞診に入ります
  • 切診【脉診】

    大腿部(太もも)の内側にある血管を触れて、脉(みゃく)の状態を診ます。
    脉診は、脈の強弱、太さ細さ、浅い深い、感触等を合わせて観察することで、身体の状態や病状を確認するものです。

  • 切診【触診】
    • 主に頸部から尾の付け根までの身体の表面を軽く撫でるように触診
    • 脊椎を中心に左右に通る経絡(膀胱経)のやや外側を、少し力を入れて触診
    • 体表の膨隆や陥下、硬結や軟弱、熱感や冷感、疼痛の有無、などを確認

Flow02診断

診察の結果から、虚証(気が虚弱になってる)か実証(病気の影響からの発熱、気が高ぶり過ぎ、気が身体の中に滞り)なのか、また虚証と実証が混在しているのか、主に何処(臓)に問題がありそうなのか、身体全体として、また臓腑として「陰」か「陽」かなどを判定します。(弁証)

Flow03治療方針の決定

弁証から、気が不足している時は補う、余計な気が強すぎる時は少し気を少なくする。(瀉)
また、身体全体の気の通りを良くする、関係している臓腑に働きかける、などの治療の方針を考えます。(論治)

鍼灸治療の施術内容

原則として、動物が出来る限り心地よい治療を目指します。
そのため、その動物の性質にできる限り合わせた治療をします。
治療は10~15分位で終わるようにしています。最低限の保定で出来る治療をします。

*動物を綱で出来た枠のようなモノに入れて、電気を通電する治療(電気鍼)は行っていません。

  • 治療に必要な経穴(ツボ)に直接鍼を刺します

  • 圧鍼

    特殊器具の先端(削ってない鉛筆の芯位の太さ)で経穴を押す(刺さない)

  • てい鍼

    直径3mm長さ7cm程の棒状の器具の先端で経穴を刺激したり、経絡に沿って皮膚を擦るようにする

  • お灸

    主に、脊椎の中心を通る経絡、脊椎の左右を通る経絡にある経穴の数カ所にお灸をします。

  • 棒灸によるお灸

    直径1.5cm位の太さの棒状のお灸を、皮膚から温かさを感じる3~5cm位離れた位置から、経穴や経絡に沿って動かしながらあてる。

  • 推拿

    用手により、非常に弱い力で皮膚を擦る、つまむ、押すなどにより、経穴や経絡を刺激する

漢方治療

必要に応じて、その動物に合った漢方薬を使います。通常のお薬と合わせて使うこともあります。
中医学では全く同じ様な症状でも、精神も含めた体全体を診ることにより、それぞれの病状を考えて行きます。
※東洋医学的診断に応じて、漢方薬を処方することがあります。

西洋医学と中獣医学との違い

  • 西洋医学

    例えば、通常の西洋医学では「咳」の原因として喉の入り口から気管や気管支、肺、等に原因がないかと考えます。また、肺と直接連結している心臓に原因があることで咳が出ることもあります。しかし、それだけでは咳が治まらない事もあります。

  • 中獣医学

    中医学でも、咳の原因として同じ原因は考えますが、その他に「気」の流れが関係しているかを考えます。
    「気」を作る事に関係し、咳に影響する「痰や湿」(一般に使われる「タン」では無く中医学用語としての)にも関係する「脾」が衰えていると考えられる場合、通常は食欲不振や胃モタレなどに処方される方剤(漢方薬)を、咳の治療として処方する事があります。

薬膳指導

手作り食を希望されたり取り入れられているご家族の方のために、症状や場合により、薬膳的な食事のアドバイス・指導をさせていただくことがございます。

「医食同源」は、中国の古くからある「薬食同源」から日本で考えられた造語でもありますが、身体の不調を治すための薬(生薬)と同様に、日々の食事(食材)も生命を養うことには欠かせないもので、その源はともに自然からで同じであると言う考え方です。

中医学では、生命は自然と一体で、調和の中で生きていると考えられています。その中で、自然や生命を「五行論」として捉えます。五行論の考えでは、身体を「肝、心、脾、肺、腎」と分けるように、食材にも身体を「熱くする、温める、寒熱に偏らない、穏やかに冷やす、強く冷やす」や、「肝を補う、心を補う、脾を補う、肺を補う、腎を補う」と言った「食性」があります。
薬膳は、この五行論を元に病状や体質を考えた食材を取り入れ、食べ物によって身体を養うものです。よくある誤解で、食事に漢方薬を混ぜると言うものではありません。
動物の場合、人と比べて使用できる食材が限られていますが、特に手作り食などに取り入れる事ができます。