ドッグフード・キャットフードについて改めて考えてみる その3
前回のコラム「その2」から続きです。
その3では人のケースを振り返りつつ、ドックフードとキャットフードについてのまとめとなります。
コラム「その2」でも、日本人の寿命と死因となる病気について触れましたが、世界の中でも日本は1970年代後半より長年に渡り、長寿国と言われてきました。
しかし、特に近年においてその実態は、寿命は伸びても、がんや生活習慣病、認知症等が増加の一途を辿っております。
それを裏付けるように毎年、国の医療費も年々上がる一方です。
この増え続ける病気についても、単純に「高齢化」がその理由、と言うだけでは説明がつかず、これらは社会全体の様々な構造的な問題が関係しています。
現在、人のがんや心臓血管疾患、脳神経疾患等が起こる根本的な原因に関わる、病気の土台となるようなものが、「慢性炎症」と言う状態であると考えられています。
慢性炎症は、軽微なものから重度なものまでありますが、毎日の生活の中で常に起こっていることがあります。
慢性炎症は、若齢ではアレルギーやお腹の調子の乱れとして現れたり、時として神経や精神的な影響として現れることもあります。
また、本人にハッキリとした自覚症状が無いまま年齢を重ねていく場合がも多く、次第に生活習慣病を助長することになります。
これらの事が結果として、がんや心臓血管疾患、脳神経疾患、腎臓病等の重篤な病気へ進展して行くと考えられます。
それでは、「慢性炎症」の原因は?と考えた場合、
「体は食べたもので出来ている」と言う大原則から考えると、その原因に食事が大きく影響していることが分かります。
加えてストレス(交感神経の亢進)、睡眠、運動、なども深く関係しています。
また、この食事、ストレス、睡眠、運動はそれぞれが単独ではなく、相互に関わりを持っています。
犬や猫が家族として迎えられ、平均寿命が伸びた事は喜ばしい事ですが、同時に、人と同じような病気がその死因となっていることを、今一度考えていただきたいと思います。
犬や猫の場合も、がんや心臓病、腎臓病等の要因が、人と同じように、あくまでも寿命が伸びた事による「高齢化」が強調されていますが、はたして本当にそれだけでしょうか?
犬や猫の病気についても、やはり人と同様に順を追って考えていくと、食事が関係していると考えざるを得ません。
加えて、このコラムでは詳しく触れませんが、やはり人と同様に、犬や猫もストレス(交感神経の亢進)、睡眠、運動なども、普段の生活の中で大きく関わっている事は言うまでもありません。
人の平均寿命が伸びている要因として、「医療の進歩」が上げられます。
犬猫の寿命が伸びたことにも、当然「獣医療の進歩」があります。
確かに、科学の進歩や医療の進歩は、人々と動物の暮らしに多大な恩恵をもたらして来ました。
しかし、医療の進歩した現在でも尚、がんや心臓血管疾患、脳神経疾患、腎臓病などの慢性期疾患については、あくまでも現在起こってしまった病気に対する対処療法が主なもので、「病気が起こらないための対策」となる医療(的思考)は未だ不十分と考えられます。
現在の医学のトレンドを確認すると、
分子レベルや遺伝子レベルの創薬や治療法の開発、さらに、患者の個別の遺伝情報を元にしたゲノム医療などが上げられます。(その他、再生医療やAIビックデーターの活用と解析の応用、医療デバイスの応用等々もありますが)
それぞれの分野の研究の進展が、今後、人や動物の病気の治療に役立つ事を願うばかりです。
しかし、本来はできる限り「病気が起こらない」ために、その原因について改めて考えていく必要があるはずです。
病気の根本的な原因を考えていくと、前述した様に「食事」との関わりを考えざるを得ません。
医療から見た食事については、医療と産業を取り巻く様々な構造的な問題なのか、〝従来の栄養学〟に目が向けられるばかりで、食事に含まれる様々な成分と病気の関連が、あまり重要視されていないのが現状です。
因みに、日本ではほとんど取り上げられていませんが、2026年1月7日、米国では慢性疾患の増大を国家的危機と捉え、その対策として、食事を根本的に見直す「新・ガイドライン」が策定され、国家として取り組むことがホワイトハウスから発表されています。(ガイドラインの細かい是非は別として)
一方、日本ではまだまだ、医療と根本的な食生活の問題が切り離されている面が大きいと考えられます。
そして、この事は獣医療についても同様な事が言えると思います。
ここからようやくドックフードとキャットフードへ戻ってまいりますが、ここまで根気よく読んで頂けた皆様には、ペットフード、特に「ドライフード」の性質を、今一度ご理解頂けたら幸いです。
繰り返しとなりますが、人の健康と食事に纏わることは、国の様々な体制にも関係した、社会全体の構造的な問題から見直す事が必要です。
現在、犬や猫の食事や副食などの膨大な商品が、いわゆるペット産業の市場において大きな割合を占めています。
そのため、犬や猫の食事と健康に関連する様々な懸念は、獣医療をも包括したペット産業と言う大きな構造的な問題の中にあると言えます。
このような事が影響してか、医療と同様に、動物の病気の根本的な原因に食事が大きく関わっていると認識している獣医療者は、私の知る限り、まだまだ少数であると考えます。
更に言えば、獣医療における「教科書的な栄養学」が、「ドッグフードとキャットフード(特にドライフード)ありき」を前提として、獣医療とペット産業の発展の中で構築されて来たと言う側面もあります。
この事が、病気と食べ物の関係についての獣医療者の認識を、より厄介なものにしていると考えられます。
我々国民は、世界的なパンデミックと言う名の〝コロナ騒動〟を経験し、「医療」がどういうものであるべきかを、一人一人が問われる事となりました。
これは、「医療」がある意味において、限界に達していることを示した事にもなりました。
これからも、様々なテクノロジーの進歩とともに、医療も進歩して行くことでしょう。
しかし、現在のままの考え方では、今後も、〝病気が起こってからの対処療法〟である事に変わりは無く、病気の根本的な原因にアプローチしているとは言えません。
生きている限り寿命はあり、多くの方が、何かしらの病気や体調の変化を完全に避けることは出来ません。
しかし、今後も病気が起こったら、今までの医療を受け続けるだけなのか? それとも、できる限り病気が起こらない事を考えて、食事から見直して行くのか? 我々は、今、その岐路に立たされていると考えられます。
年々平均寿命が伸びる現在において、犬や猫の、特に犬では、圧倒的に純血種や純血種同士の混血種が多くなりました。このような人工的な繁殖が進んで行くと、結果として、より系統的な、遺伝的な背景を持つ疾患が発生しやすいと考えられます。また猫も同様な傾向にあります。
人と比べて寿命の短い犬や猫では、若齢期から老齢期までがより早く進みます。
つまり、上記の系統的な疾患が起こりやすい問題に加えて、中齢期から老齢期を人より早く迎える中で、食事をはじめ、様々な影響を、より受けやすいと考えます。このような生活を送る中で、慢性炎症という状態が、徐々に、あるいは持続的に起こりやすいと考えられます。
今回のコラムでは人の医療の現状を考えならが、主にドライフードについて、その1−3と書いて来ました。
これらのことを考え、動物においても、「今までの当たり前の食事」について、今一度、見直す必要があると考えます。
ここまでお読み頂き、ありがとうございました。
