「猫の老後」について、〝サルコペニア肥満〟から考えてみる・・・その1
老齢期の猫の変化については、過去のコラムでも触れています。
今回のコラムでは老齢期の、特に筋力の低下や活動性の低下の原因となる、いわゆる「サルコペニア」について考えて見たいと思います。
さらに、一般的に言われているサルコペニアの影響に加えて、肥満との関係についてお話します。
そして、サルコペニアと肥満の関係が「猫の老後」にどの様に関係して行くかを考えます。
「猫のサルコペニア」と言われても、あまり聞き慣れないワードと思います。
「サルコペニア」とは、加齢により筋肉量が減少して筋力低下や身体的機能低下をきたす状態を言い、人の医療では2010年より提唱され、国や地域により様々な検討が行われてきた結果、2023年に国際的な統一した定義が出来た比較的新しい概念です。
サルコペニアは人において、加齢による運動量の減少、骨格筋幹細胞の減少、慢性炎症、ホルモンの変化、インスリン抵抗性の増加などの要因によって、筋肉のタンパク質の分解が促進され、合成が抑制されることで、骨格筋の量が減少すると考えられています。
猫においてもほぼ同様な事が当てはまると言えます。
サルコペニアと混同してしまう用語として「フレイル」があります。
フレイルは、筋力や活動量の低下の他に、認知機能や心理的な要素の低下、また社会参加や人とのつながりの減少などの要素が関係してきます。日本老年医学会が2014年に提唱しました。
猫のフレイルの明確な定義はありませんが、2021年にAAFP American Association of Feline Practitioners (アメリカ猫専門医協会)のガイドラインが参考になります。
具体的には、活動性の低下や家族や同居動物との関わりが減る、また体重の減少等が含まれます。
サルコペニア(筋肉量の減少や筋力低下)は、フレイルの大きな要因となっています。
このAAFPのガイドラインでは、「フレイル=虚弱」を単なる「老い」とせずに、高齢の猫ができる限り快適で健康的に生活するために、フレイルの大きな要因となるサルコペニアの評価を重視しながら潜在的な疾患が無いかを考えて行くことを提唱しています。
それでは、身体がどの様な状態になった時にサルコペニアと診断されるか?と言うことですが、体重だけではなく、痩せているのか太っているのかなどの主に体型を評価する指標となるボディ・コンディション・スコア(BCS)と伴に、全身の筋肉量の割合を確認するためのマッスル・コンディション・スコア(MCS)を確認することで評価されます。
少々ややこしいお話になってしまいますが、ここでようやく表題にある「サルコペニア肥満」について考えてみます。
「サルコペニア肥満」は、サルコペニアに加え、肥満症を伴うとされています。
サルコペニアや肥満症のそれぞれ単独の場合に比べて、身体機能の低下や生活習慣病の悪化が高まるとされています。
サルコペニア肥満は新しい概念で、人において2024年に関連学会が合同でその定義と診断基準を提唱したばかりです。
猫において、肥満症が他の疾患の要因になったり悪化因子である事は高齢期においても論じられていますが、サルコペニアとの関連性に注目したものは、まだ殆ど無いように思います。
しかし、サルコペニアと肥満は相互に関係し合い、まさしく「猫の老後」に強く関係します。
そしてこの事は、老齢期に入ってから考えると言うよりもむしろ、若い頃からの〝そなえ〟が重要になってきます。
プレシニアやシニアの猫のご家族は勿論のこと、猫をお家に迎えたばかりの方も、是非読んで頂きたいと思います。
少し長いので、「その1」は前説となってしまいましたが、「その2」では実際の症例を交えてお話したいと思います。
