仔犬や仔猫などのゴールデンタイムについて・・・その4
前回までのコラムの続きです。
□ 散歩の重要性
散歩について、改めて考えて見ましょう。
初めに断言してしまいますが、犬との生活の中で散歩は、原則欠かせ無いものと考えられます。
実際に、散歩へ行っているかどうかや散歩の頻度をお家の方へ伺った場合、散歩へはあまり行って無いと言う場合も少なからずあるようです。
大半はお家の方の都合による事が理由のようですが、
「小型犬は散歩へ行かなくて良いと聞いたから」とか、「外へ行くと歩かないから」等、様々な事もあるようです。
散歩へ行く事は、
外へ行く事、外で身体を動かす事によって、家の中では感じる事の出来ない様々な肉体的、精神的な刺激を受ける事になり、犬にとって、とても重要な事と考えられます。
特に若い犬にとっては、散歩を通じて、肉体的にも精神的にも発散する事が重要となります。
高齢の犬には状況に応じた対処が必要になってきますが、今回のコラムでは割愛します。
特に、これから犬とお家の人との関係を築いていく、躾をしていく、仔犬の場合、ほとんどがお家に来た時点から、既に外の世界や散歩へ慣らしていく為の時期が始まっています。
外へ出て、地面を歩く、知らない人や犬に会う、車などの音を聞くなど、様々な事に接して、慣れていくことを「社会化」と言います。
動物病院へ行って、診察台へ乗ったり、身体を触られたりする事も、社会化の一つと言えます。
犬の社会化(犬同士の行動や様々なもの事に慣れて順応する)の時期は、狭い意味では生後3−4週から始まり16週頃までとされています。この時期を過ぎて大きくなった場合、それ以前の時期よりも様々な事に慣れる為に時間がかかるようになると考えられています。
多くの場合、仔犬が新しいお家に迎えられるのは、この社会化期が既に始まっている時期になります。
お店など、犬の入手先からは、「予防接種などが全て終わるまでは、外へ出さないで下さい!」と、(未だに)指示を受けている場合が多いようです。
この考え方は、伝染病から守る為には確かに正しい事かもしれません。但し、何処にでも犬の伝染病が存在するわけでは無く、注意しながら外へ連れて行くことは十分に可能です。
この社会化の時期が、正に逃して欲しくない「ゴールデンタイム」と言えます。
犬をお家に向かえ、新しい環境に慣れたら、少しずつ外へ連れて行き、散歩の練習を始めましょう。
また、社会化期において、「散歩」に慣れる事が必要ですが、
「どのようにして、散歩へ行くか?」 この事が、これから躾をしていく事にも大きく関係します。
成犬になって楽しく散歩へ行ける様になるためにも、仔犬の時からの「上手な散歩の行き方」を練習する事が、重要です。
散歩へ行く上で、これだけは注意して欲しい事
・家の中で必ず首輪に慣らす。
・散歩へ行く時は、必ず首輪にリードを付けて行く。
(ハーネス、胴輪は、しっかりとした散歩が出来る様になるまで使わない)
・リードは必ず通常の紐タイプのリードを使う
(手元で調節し、長さを伸縮出来るものは、成犬になっても通常の散歩では使わない)
これは望ましい散歩に慣れさせて行く上で、必須と言っても過言ではありません。
散歩は、楽しく行くことが大原則ですが、犬が自分で行きたい方向へ行きたいように行っても良いという事ではありません。あくまでも、「お家の方のペースに合わせて、一定のルールを守って行く」と言う事を教えていく必要があります。
散歩へ行くのに、そんな練習までしなければならないの?と、考えてしまうかもしれませんが、互いの関係を築いていく上で、お家の方が主導権を持っていることを学ばせる、絶好の機会となります。
これを、ゴールデンタイムの内に、上手く使わない手はありません。
散歩の行き方も、家の中での遊びや練習も、全てが関係しています。
□ ワンちゃんにも「食育」の重要性
食事の好き嫌いに関してのご相談も、よくある相談の一つです。
「うちの子は、○○しか食べない」「直ぐに飽きてしまう」「気が向かないと食べない」等。
改めてよく考えてみると、仔犬の初めの頃は、ほとんどの犬が与えられた食事をその場で直ぐに食べ切っていたはずです。
いつの間にか??食べムラが多くなって、・・・と、言うお話しを聞くことがよくありますが、食べが悪くなった時には、必ず理由があったはずです。
その犬の体型や犬種、性質などが食事の食べ方などに影響することもありますが、ほとんどの場合、お家の方が「どんな物を?」「どのように?」与えるかによって、その犬の食べ方は少なからず、決まってきます。
「嫌いって言う物をわざわざ食べさせなくても、食べたい物を、本人の食べたい時に食べさせて、何が悪いの?」と、考えられる方もいると思います。人の食べ物についても、様々な考え方があるので、何が絶対!と言う事は無いのかもしれませんが。
ここでは単純に、「健康の為には適切な栄養バランスをとる必要があり、その為には偏りの無い食事を取らせる必要がありますよ」、と言うようなことをお話しするつもりはありません。
基本的には、お家の方が決めた食事の時間に、与えられた食事を、いつもその場で食べ切る様にしていく事、毎日の習慣とする事が重要です。
これにはいくつかの理由があります。
○身体の事から考えた場合
・規則的な食事の食べ方が、お腹の動きを初め、身体の色々なバランスに関係すると考えられます。
実際に、「よく吐く」と言う事で来院された時に、食事の時間と内容、食べ方に原因があるような例も珍しくはありません。
・体調によってお薬を飲まなければならない時に、普段から気が向いたときにだけ食事を食べていたり、好き嫌いのハッキリしている犬の方が、お薬を飲ませづらく(中々飲んでくれなくて)、お家の方が大変な思いをされます。特に小型犬で多い心臓病のお薬が飲めない場合、それが寿命に繋がることもあります。
・体調や病状によっては、薬よりも普段の食事を変更する事が必要になることも少なくありませんが、そのような場合も、難しくなります。
○躾に関連した事として
・食事の時間になったら「自分は、お家の方から食べ物をもらえているんだ」という事を、少なからず犬が実感するように、食事を与える必要があります。
この事は、犬がお家の方を「頼れるリーダー」と考える事に繋がります。
実際 の食事を与える上での注意点
・1日の食事量を必ず決めます。
・食事を与える時間を大まかに決めます。
食事の1日量を、決めた時間に分けて与えます。
必ず食べきる量を与えるようにします。
残してしまう事がある場合、与えている一日の量や与える時間を見直して下さい。
・ドックフードのパッケージに表示してある量にこだわらない。あくまでも目安です。
成長の度合いや、成犬になってからの体型などにより調節していくことが必要です。
・3分間位で食べ切らなければ、必ず片付けてしまう。
(特別な事情が無い限り、食事を置きっぱなしにしておくことは厳禁です!)
・食事を食べなかった代わりとして、おやつやガムなどは与えない。
・特に仔犬の場合、躾の練習のご褒美としてドライフードや適当なおやつを与えますが、それ以外の場面では、食事をしっかり食べる習慣を付けるために、おやつやガムなどは与えない。
・食事のタイプを変えても食べられるようにするために、
ドライフード→ドライフードのふやかし→ウエットフードと、ローテーションして与えることが望ましい。
犬にとって、どのような食事(ドックフードのメーカーやタイプ、手作り食等々)が望ましいか? なども、とても重要な事ですが、その前に「食育」を是非見直してみて下さい。
成犬になっていても、十分、見直せます。