猫にとっての“ストレス”ってなんだろう?・・・健康的で、快適な環境づくりの為に
猫は、お家の方が当たり前と考えている普段の生活環境から、実際には様々な影響を受けて生活しています。
特に、現在の日本において、人や他の動物と一緒に室内だけで生活している猫にとっては、特に重要と考えられます。
猫は生活環境からストレスを受けたとき、関連した病気や、例えばトイレ以外の排泄等の望ましくない行動などを、起こすことがあります。
猫の健康や福祉を考える国際組織であるISFM(国際猫医学会)やAAFP(全米猫獣医協会)は、猫がストレスを受けず快適で健康的な生活を送るための、環境を整えるために必要なガイドラインを示しています。
このガイドラインに沿って、猫にとっての快適な生活環境について、出来るだけ分かりやすく、お話しして行きたいと思います。
なぜそこまで生活環境について考える必要があるのか?を、次の事から確認していきましょう。
- 猫が本来持っている、習性や欲求と行動を、今一度考えてみましょう
猫は本来、単独で狩りをして生きている動物です。他の猫に頼ること無く、また助けられることもありません。(もちろん、毎日食事をもらっている猫が狩りをする必要はありませんが、この習性は変わることは無く、実際に狩りをしなくても様々な事に関係しています。)
そのため、もし、猫自身がひどく傷ついてしまったとしたら、それはそのまま「死」に関連するため、常に自分自身を守る必要があります。
このような事から、実際に危険なことが起こる前に、猫自身にとって脅威となる(可能性のある)ものをいち早く回避したり、その場から逃避するなどの身を守る為の行動が、習性として備わっています。
猫が生活している環境において、常に自分自身に何が起こるかを十分に予測が出来ない状況や、もし、猫にとって脅威や不安を感じた時に、逃げたり隠れたりすることが十分出来ない場合、猫はこれらの状況から強いストレスを受けます。
いつも猫自身が周囲の状況をよく観察でき、危険や脅威と感じたらいち早く逃げたり隠れることが容易に出来る環境があれば、ストレスを受けることは少なくなると考えられます。
- 猫の、猫同士の関係性(社会構造)を理解しましょう
前述したように、猫は単独で狩りをするため、単独で生活していける動物です。
生活する上で十分な整った環境や十分な食物があれば、一定のグループで暮らすことも出来ます。
ただし、出来るだけ良い関係性が保たれるのは、ほとんどの場合、血縁の雌同士に限られます。
子猫の時から仲が良い兄弟でも、2−3歳の社会的成熟期を迎えると、互いに縄張り意識ができ、互いに距離を置くようになります。
特に、複数頭の猫が一緒に生活する場合、それぞれの猫にとっての環境が十分では無い場合、互いにストレスを感じ、仲良く過ごせることは少なくなります。
同じ場所で一緒に寝ていたり同じ場所で一緒に食事をしていたりして、一見仲が良いように見えても、寝床や食事の場所が足りないために、しょうがなく同じ場所に集まっていると考えられる事があります。
猫は、知らない猫が自分の縄張りに入ってきた時、攻撃的な行動を取る事があります。
ただ、前述の様に、出来るだけ争い事を避ける様に行動することが多く、そのために日常生活において、直接的な闘争へと発展しないように、マーキングや爪とぎ、顔や尾、体のポーズなどを使い、コミュニケーションを取っています。
同様に、食事の場所や休息の場所を、時間差で利用することもあります。
日々の生活の中で猫がストレスを感じない様にするためには、猫にとって必要な休息の場所、食事の場所、トイレ、爪とぎや遊び場等が、適当な距離を持って、十分な数が必要となります。
以上のような、猫の習性と行動的な特性や、猫同士の関係性を考えた上で、猫にとっての快適な環境の為には、次に挙げる5つの項目が不可欠と考えられます。
1 猫にとって安心、安全な場所
2 必要な物:水、食事、トイレ、爪とぎ場所、遊び場所、休息または就寝の場所
3 遊び、特に捕食行動の遊びが出来る
4 人との関係性:猫の習性を理解した接し方
5 猫の嗅覚を理解した環境づくり
猫の病気や困った行動を減らす為には、猫の特性をよく理解し、出来るだけ快適な生活環境を提供する必要があります。
次回のコラムから、1〜5について順に詳しくお話しさせて頂きます。