猫が快適に生活を送るために必要な5つこと その1
1)安全な場所・・・誰にも邪魔されず、安心して過ごせる場所
猫はその性質上(前回までのコラム参照)、自分自身の脅威になる可能性のある「何か」を探るために、匂いや音、見慣れない物や動物等に対して常に注意を払っています。
もし、猫が何か脅威を感じた場合、その脅威から身を守る為に、猫自身が安全と感じられる場所が必要となります。
この安全な場所は、誰にも影響を受けず、猫が安心して、リラックスして過ごせる場所である必要があります。
普段の生活の中で常に周囲に気を使いながらも、その猫にとって安全でリラックスできる場所が無い場合、それは猫にとって大きなストレスとなります。
家の中に1頭しか猫がいない場合でも、その猫にとっての安全な場所は必ず必要となりますが、複数の猫が同じ家の中で生活する場合、それぞれの猫に個別に「安全な場所」が、必要になります。
また、複数の猫がいる場合、安全な場所があってもそこへ行くまでに他の猫が邪魔をする場合もあるため、安全な場所へ行くための複数のルートが必要となります。
安全な場所はそれぞれの猫に個別に必要となるため、猫の数が多くなればなるほど、生活空間に適当な広さと余裕が必要になります。
これは、以前の猫のトイレ事情の話とも通じる点があります。
どんな場所が「安心した場所」になり得るのか?
猫にとっての安全な場所は、猫自身が「隠れている」つもりになれる、つまり外から猫の様子が見えないような物や場所が望ましいと考えられます。
例えば、段ボール箱やプラスチックのキャリーケースなどが良いでしょう。
(因みに布製や、ファスナーで閉じるソフトタイプのケースやデイバックタイプ等はお勧めしません)
余談ですが、動物病院へなかなか猫を連れてこられない、と言うお話を聞きますが、多くの場合、キャリーやバックに入れることが出来ないと言う事からのようです。
普段からキャリーケースが猫にとっての安全な場所であれば、そのまま動物病院に連れてくる事も容易になると思われます。
安全な場所は複数あっても良いので、キャリーケースはいつも猫が入れるところへ置いておきましょう。
キャリーケースに慣れない場合は、キャリーケースの中でおやつを与える事で、キャリーケースが印象の良い場所になるでしょう。
よく、「猫は高いところが好き」という場合がありますが、高所から自身の脅威になるものが無いかを常に監視したいと言う事に関係しています。この場合、同時に身を隠せるような凹みがある場所がよいでしょう。
猫がどんな「もの」に脅威を感じるかは、個々のねこの感受性に関係しています。
生まれつきの猫の性格や性質もありますが、子猫の時の過ごし方なども影響することが多いと考えられます。(以前のコラム参照)
同様に、安全な場所としてどんなところを好むかは、それぞれの猫によって変わってきます。複数の猫や同居している他の動物、家族や家族以外の人の出入り等にも影響されることがあります。
高齢の猫や子猫にとって、キャットタワーや高い台などは、落下などの事故の危険性がある為、注意が必要です。
猫と人が生活する家の構造や間取り、複数の猫や他の動物等を考えて、それぞれの猫にとっての「安全な場所」を考えてあげて下さい。
2)必要な物:食事・水・トイレ・爪とぎ・休息場所 の適切な配置
猫が生活する上で重要な物として、食事・水・トイレ・爪とぎ・休息場所が上げられますが、
それぞれが適度な距離をもって配置されていることが望ましいとされています。
「安全な場所」と同様な話になりますが、猫を取り巻く生活環境から、その猫に合った配置を考えて下さい。
特に注意したいのは、やはり複数の猫がいる場合に、それぞれの猫にとって必要な物が十分な余裕を持った配置で、提供される必要があります。
3)遊びや捕食行動の機会を与える
以前のコラムでお話ししましたが、猫には、食べ物を食べたい、空腹を満たしたいと言う「摂食行動」と、獲物を捕獲したいと言う欲求の「捕食行動」があります。
猫の遊びのほとんどは、この捕食行動(狩りをしたい)に関連したものと考えられます。
個々の猫の性格や年齢によっても、どの程度必要かは異なるため、猫の様子に応じて普段の生活の中に「遊び」を取り入れていきましょう。
ただし、ここで注意点があります。
ネズミの形をしたおもちゃやトリの羽根などがついたおもちゃで遊ぶときに、正に実際の狩りをする時のような興奮をしてしまう性格の猫には、この様なおもちゃを使っての遊びはお勧めしません。
また、普段の生活の中で、お家の方の足などにじゃれついてくる猫にもお勧めしません。
なぜなら、おもちゃで遊び終わった後でも、猫にはまだ「遊び=バーチャルな狩り」の興奮がそのまま残ってしまい、たまたま通りがかった人の足などに(本気で)襲いかかるように噛みついてしまうと言う事があるからです。
おもちゃを使わずに初めから人の手足を遊びの道具にすることも、そのまま人の手足を本気で噛むようになってしまうことが多いので、やってはいけないことです。
猫が一人でおもちゃにじゃれついている時に、おもちゃを咬みちぎって飲み込んでしまわないように、おもちゃを与えっぱなしにする事は止めましょう。
同様に、日頃から布地、ビニール、紐状の物や家具の一部などに興味をもって、咬みちぎったりすることはありませんか?
これらは全て誤飲(結果、腸閉塞などになってしまう)の元になってしまうので、日頃から猫が食べてしまわないように十分に注して下さい。
お勧めの遊びは、猫が一人で遊べる、探索行動と捕食行動の欲求を同時に満たせる物です。
例えば、空のペットボトルに何カ所か穴を開けて、中にフリーズドライのおやつなどを数粒入れた物。
段ボール箱を使った迷路やパズルの中におやつを入れた物などがお勧めです。
同じ物だと、飽きてしまうことがあるので、少しずつ仕組みの違ったおもちゃや遊びを与えると良いでしょう。
複数の猫がいる場合、遊びをきっかけに本当の喧嘩になってしまうことがありますので、おもちゃを奪い合ったり、喧嘩になったりしないように十分に注意して下さい。
猫が快適に生活するために必要な物、5つのうち、3つを簡単にお話ししました。
それぞれの猫にとって、生活環境は異なることと思います。
現在の生活環境が望ましい状態がどうか、見取り図などに書いて確認して頂くと、分かりやすいと思います。
また、家の見取り図に猫に必要な物の配置を示した物を、一度、動物病院で見て頂く事をお勧めします。
これは、トイレのコラムでお話しした、トイレの環境にも関係することです。
次回は猫に必要な物の4.5をお話しします。