本当に猫の事を考えた・・・猫の食事について
2016年のデーターではありますが、(社)ペットフード協会のデーターでは、市販のドライフードを中心(食事の70%以上)に与えられている猫は、全体の約62%と示されています。また、ウエットフードを中心(食事の70%以上)に与えられている猫は、全体のわずか3.7%となっています。さらに、約90%の猫がドライフードを多少なりとも与えられ、約51%の猫はウェットフードを全く与えられたことが無い事が示されています。
これらのデーターから、一般的に、「猫の食事は?」と言えば、「ドライフード」と考えられていることがわかります。
*犬も概ね同じような傾向があると思いますが、ここからはドッグフードにも当てはまることなので、ワンちゃんがお家にいる方はドッグフードでも参考にして下さい。
なぜ、これほどまでに「ドライフード」が一般的なのでしょうか?
様々な理由はあるかと思いますが、特に、「手軽さ」「手間なし」「(比較的)低コスト」などが考えられます。
そもそもドライフードは、人の保存食の発想から作られた物です。
長期間の保存性を考えた結果、水分を出来るだけ飛ばし(乾燥させ)、色々な面で都合の良い形を考えたら、現在の形状になりました。
また、その形状を形作るためには、どうしても穀物類や芋類、豆類といった、原料が必要になっています。
また、穀物類等を原料に使うことによって、コストも出来るだけ抑えられます。
・・・何か忘れて無いかなー?と、改めて考えてみると、・・・猫にとって、ドライフードと言う物は、
本当はどうなのでしょうか?
たぶん、猫の事をよーく、考えて、作っているかもしれません。
「総合栄養食」と言う称号を冠しているドライフードであれば、最低限の栄養素は保証されているでしょう。
しかし、このように作られたドライフードは、結果的に猫にとって・・・
本来の食性からはかけ離れた物になってしまいました。
最近の、一般向けの猫のフードの解説書(獣医さん解説)などでも、出来るだけドライフードよりもウエットフードを与えた方が良いと、勧めているものがみられます。
その中で、「猫でも、フードに含まれる炭水化物が35-40%までなら大丈夫。ドライフードの栄養源として問題ない」と言う様に書かれている書籍も目にします。
これは、「フードの中に含まれる炭水化物が、何%までなら消化吸収出来るか?」と言う事を、実験で調べてみたら、35-40%までなら消化出来た」、と言うデーターに基づいた物と考えられます。
しかし、だからと言って、35-40%の炭水化物が含まれるフードを猫に与えて良い、とは言えません。
なぜなら・・・
猫は元々、炭水化物を消化吸収出来たとしても、人間の様に糖質を肝臓でグリコーゲンとして貯蔵出来ないため、そのまま血糖値が上昇してしまいます。
ここまで読まれても、「猫の食事と言ったら、ドライフードでしょ?」
「で、ドライフードの何が良くないのですか??」と、思われるかもしれません。
それでは、わかりやすく、ドライフードのデメリットとメリットを確認しましょう!
ドライフードのデメリットは?
・ 前回のコラムでもお話ししていますが、圧倒的に、水分が不足してしまいます。
水分の不足は膀胱炎や腎臓病にも関係します。
明確な統計的な比較調査をしたわけではありませんが、前回のコラムで紹介した「猫に多い病気」と、実際にほとんどの方がドライフードを中心に与えている事に、何らかの関連性のあることは十分に考えられる事です。
・ 猫の本来の食性(高蛋白、低炭水化物、高水分)とは逆に、ドライフードでは高炭水化物となるフードがほとんどです。
高炭水化物は、高血糖、肥満の原因となります。
高血糖と言うと、糖尿病を思い浮かべるかもしれませんが、炭水化物が多いドライフードによって急激に血糖値が上がると、その後はすぐに空腹感を感じる事になります。また、高血糖は、他のホルモンにも影響して、人の倍は寝る猫の睡眠を妨げることに繋がります。このことは猫にとって大きなストレスとなります。
明らかに肥満の猫が、食事を食べてもすぐに欲しがる、と言う事がよくあります。また、お腹が空くとイライラしたようになる場合もあります。
肥満は様々な炎症疾患のリスクとなります。
特に猫では、糖尿病、膵臓炎や脂肪肝、胆管肝炎等に大きく影響します。
・ 多くのドライフードは、本来の目的である保存性を保つ為に、何らかの添加物が必要になります。また、袋詰めされた時点から、抗酸化剤等が添加されていても、確実に劣化は進んでいきます。また、どんなに良い原材料を使っていても、製造過程で本来の栄養素が変性してしまいます。
ドライフードのメリットは?
・ なんと言っても、人のためには、手軽で便利で時短!
あ!、(ドライフードだけを食べている)猫にとっても、食事を待つ時間が短く、イライラしなくて良いかも?
・ ドライフードの種類や購入する側の事情にもよりますが、他の種類のフードに比べてコストが抑えられ、保存性もあるため経済性が高いと言えます。
・ 災害時には、当面の食事として活用できます。
・ シェルター(保護施設)等では、一度に多くの猫に食事を与えるためには、経済性、保存性を含め、活用度が高い食事です。
・ 猫の捕獲本能や探究心を満たしてあげるための、遊びやご褒美に活用出来ます。
・ とりあえず、総合栄養食であれば最低限の栄養素は確保できます。
以上の事から、ドライフードのデメリット、メリットをよーく考えてみましょう。
長い目で猫の健康状態や生活の質などを考えると、ドライフードは出来るだけ控え、上手く活用するのが望ましいと考えられます。
「それじゃー、何を食べれば良いのですか?」と、言う事ですが、ドライフード以外の猫の食事を
今一度確認してみましょう。
ウエットフード・・・缶詰やレトルトパウチ
半生タイプ(セミモイスト)・・・ドライフードの形で軟らかい?不思議な食べ物
フリーズドライ
エアドライ ・・・・ちょっと上級編
ローフード・・・さらに上級編
手作り食 ・・・さらに、さらに、上級編
などが上げられます。
それぞれの特徴がありますが、ここでは、あえてドライフードの次に一般的な、缶詰やレトルトパウチのウエットフードについてお話しします。
猫の食性と生理機能から、猫の食事の中には十分な水分(60%以上)が含まれている必要があります。また、出来るだけ高蛋白、低炭水化物である必要もあります。
このような条件を満たす食事が、ウエットフードになります。
ウエットフードのメリットは?
・水分の確保ができる → 前のコラム 水分の重要性参照して下さい。
・ドライフードに比べ本来の食性に近く、炭水化物を少なく、蛋白質(特に動物性の)を多く確保できます。
・長期保存が出来、開封してなければ劣化もほとんどありません。
・食べ慣れれば、嗜好性が高く、猫の満足度が高い傾向にあります。・・・イライラしないかも
ウエットフードのデメリットは?
・ドライフードに比べると、価格が高い傾向にあります。
・ドライフードより、若干の手間がかかります。(考え方によるかも?)
・持ち運びに若干の手間がかかります。
・開封後の保存に注意が必要です。
ここで、忘れないで頂きたいことがあります。
ウエットフードを選ぶ際には、次の点に気をつけて下さい。
ウエットフードの中には、魚や肉を加工しただけで、栄養的には不十分な物も多くあり、その場合、
「一般食」や「補助食」等で表示さています。
ウエットフードの、「総合栄養食」を選んで下さい。
ウエットフードの総合栄養食でも、様々な材料や添加物を使っている物があるので、出来るだけ添加物の少ない物が、より望ましいと考えられます。
食事についてのお話をすると多くの事があるため、今回のコラムでは、まず、基本的なフードを選ぶために知って頂きたい内容をお話ししました。
ペットフードに関しては、様々な情報が飛び交い、かなり多くの事柄があります。
中には色々な意味でディープな?話題もあるため、コラムで全てをお話できる訳ではないですが、少しでもねこちゃんやお家の方のお役に立てる様に、出来るだけお話ししていきます。