猫の病気をよーく考えると見えてくる・・水分の重要性
前回コラムの終わりの予告として、今回のコラム「食事」についてですが、その前に・・・・
猫に多いと言われている病気をもう一度確認してみましょう
大手保険会社3社の出している、実際に保険請求のある「猫の病気ランキング」をざっとまとめて見ると、
1歳〜5-6歳までの最も多い病気は、「膀胱炎」となっています。
(関連して、3〜5位に「尿石症」が入っています)
6-7歳以上で最も多い病気は、それぞれ「腎不全」となっています。
統一された統計ではなく、あくまでも参考ですが、概ね現状を表していると考えられます。
(膀胱炎にも様々な原因があり、腎不全(腎臓疾患)にも様々な原因があるので、これも全てを同列には出来ないのかもしれませんが)
これらのことから考えた場合、
「猫」と言う動物は、若いときは「膀胱炎」を起こしやすい性質を持った動物なのでしょうか?
野生のヤマネコや野生化したイエネコに、同様に膀胱炎が多く見られるという報告は、私の知る限りではありません。
「猫」と言う動物の排尿や排便の性質を考えた場合、人と生活をしている猫において「膀胱炎」は、生活環境が大きく影響していると考えられます。(前述のコラムでトイレの重要性をお話ししました)
また、後述する水分の取り方と食事も大きく関係しています。
「猫」という動物は、高齢になると「腎不全」になりやすい性質の動物なのでしょうか?
野生のネコ科の動物で、イエネコと同じ様に腎臓病になりやすいのかは、不明です。
腎臓の細かい構造や水分の吸収の割合は、動物の種類によって大きく異なります。特に猫の腎臓は人と比べて構造的に、少ない水分を効率よく利用出来る様になっています。ただし、この効率よく水分を利用出来る構造自体が、ダメージを受けやすいと言われています。
また、腎臓は血液中の老廃物を尿にして捨てるための、小さな濾過器が無数に集まった臓器ですが、猫は他の動物に比べて、この濾過器の小さな管が詰まりやすい動物であると言う事が分かっています。
水分を効率よく利用できなくなり脱水症状が進んだり、壊れた濾過器が増える事によって尿に老廃物を排泄できなくなる事が、腎不全と言われる状態です。
この様な構造や働きから、「猫」(厳密には今の所 “イエネコ” に限ってかもしれませんが・・・)と言う動物は、腎臓の働きにダメージを受けやすく、その働きが悪くなりやすい動物と言えます。
それでは、
どうしたら、このような病気を出来るだけ予防することが出来るのでしょうか?
病院で、尿検査や血液検査を定期的にするだけで良いのでしょうか?
尿石症や尿路疾患対応(?)のフードや、腎不全を起こしやすい年齢になったら、腎臓を考慮した(とされている)シニア用のフードを食べさせれば良いのでしょうか?
ここで大きく関わってくる事が、猫にとっての水分の重要性です。
膀胱炎や腎不全を考える上で、猫がどれ位の水分を取り入れているかを考える必要があります。
人と一緒に生活している猫は、十分な水分を取り入れることが出来ているでしょうか?
今一度、見直してみる必要があります。
以前のコラムでもお話ししましたが、現在私たちと生活する猫(イエネコ)は、元々乾燥地帯に生息するヤマネコから発祥した動物です。ヤマネコは捕獲した獲物(ネズミや小鳥、は虫類や昆虫等)の身体に含まれる水分で、身体に必要な水分のかなりの割合を得ています。また、乾燥地帯に適応するために水分を効率よく利用できる様に尿が濃く、そのため喉の渇きにも強い(鈍感とも言えます)と言う、生理的な特徴を持っています。
この食性や尿を濃くして、喉の渇きに強い(鈍感)と言う点は、現在私たちと生活しているイエネコにもそのまま当てはまることです。
因みに、獲物となるネズミの身体の約半分以上は水分が占めています。
例えば、イエネコが、野ネズミだけで一日に必要なカロリーを摂取するとしたら、食べ物(ネズミから)と一緒に、およそ200-250mlの水を取り入れている事になります。(細かい計算はあえて記載を省きます)
一般に、猫の水分必要量の目安として、一日に必要なカロリー1kcal当たり、1mlと言われています。例えば、4kgの猫で、おおよそ240kcalが必要とすると、240mlの水が必要とされています。
これは、概ね、イエネコが野ネズミから摂取する水分量と合っています。
家の中だけで人と生活している猫は、当然ネズミを食べるわけではありません。
ほとんどの猫は、「キャットフード」を食べています。
それでは、キャットフードと、必要量の水さえあれば、大丈夫でしょうか?
こんな比較があります。
ドライフード(水分約8%)を食べて水入れから水を飲んでいる猫と、ウエットフード(水分約70-80%)を食べて水入れから水を飲んでいる猫を比較した場合、総水分摂取量はほぼ同じ(正確にはウエットフードの方が若干多い)ですが、ウエットフードを食べている猫の方が、ドライフードを食べている猫に比べて、一日にする尿の量が倍位に多い、と言う結果が出ています。
(尿を作る働きが正常であれば、身体にとって必要十分な水分を取り入れた場合、多少余分な水分は当然尿として排泄されます。逆に身体にとって水分が不足した場合、老廃物を捨てるために必ず尿は作られるため、尿の中の水分を少なくした濃い尿が作られます。)
このようなことから、
膀胱炎や尿石症の予防のためには、十分な水分を取り入れることにより、出来るだけ多く尿をする必要があります。(猫にとっては、本来、普通のことですが)
腎臓の働きにとっても、身体に取り入れる水分が十分にあることが前提となっています。しかもこの水分の割合は食事の半分に含まれている必要があります。この本来あるはずの水分を十分に取り入れることが出来なければ、腎臓の水分を吸収する仕組みそのものがダメージを受けてしまいます。
従って、腎不全を予防するためにも、普段から水分を十分に取らせることが重要です。
以前のコラムでも触れていますが、膀胱炎を経験している猫の方が、将来腎不全を引き起こす割合が多いと言うデーターからも、若いときから水分の取り方、食事の取り方に注意していく必要があります。
少々長くなりましたが、食べ物に含まれている水分がいかに重要かをご理解頂けたでしょうか?
猫の病気は膀胱炎や腎不全以外にもあり、これも、食事が大きく関わってきます。
いわゆる、低カロリー、肥満用、体重ケア、(多くはドライタイプ)と言ったフードで、本当に大丈夫ですか?
今後のコラムでお話ししていきます。