猫の「毛玉ケア」について、改めて考えて見る ぱーと1|ふじみ野市|さくら動物病院

さくら動物病院

コラム

猫の「毛玉ケア」について、改めて考えて見る ぱーと1

コラム 

ネットで「猫の毛玉に関する問題」を検索すると、

大きく分けて「毛玉と嘔吐」の問題と、「出来てしまった毛玉のお手入れ」についてがあります。

この2つの問題をそれぞれ考えてみましょう。

 

▢ 「毛玉と嘔吐」〜 吐く毛玉について

猫が、〝毛玉を吐く原因〟としてネットで上げられていることは、

・猫が毛繕いと同時に毛を飲み込んでしまうため

・特に長毛の猫では、毛繕いによって飲み込んでしまう量が増えるため

・猫の換毛期(抜け替わり)の時期に、飲み込んでしまう毛の量が増えるため

・アレルギーなどがあると、痒いところを舐めるときに毛を飲み込んでしまうため

その他に、

・ストレスが原因

・定期的なケア(ブラッシング、シャンプー)が足りない

・猫の生理現象である

などがあります。

 

次に、猫の〝毛玉の嘔吐に対する対策〟としてネットで上げられていることは、

・猫草を与えてみる

・食事に毛玉ケアフードや毛玉ケアのおやつを取り入れる

・薬やサプリメントを活用する

・ストレスを与えない:空腹ではないか? 温度は適温か? かまってあげた方が良かどうか?

・ブラッシングをする

・汚れを拭き取ったり、シャンプーをする

などがあります。

 

私の検索能力が足りないせいか、これらのこと以外はあまりなかったように思います。

・・・・・、間違いでは無いかもしれませんが、改めて確認して頂きたいことがあります。

 

米国の大学のレポートで、毛玉のみを週に1−2回程度吐くことは、問題ないとされています。
教科書的にも毛玉の嘔吐については、今の所、「一般的には正常」とされています。

また、毛玉の嘔吐をコントロールすることには、賛否両論もあるようです。

・・・・・、確かに「病気」では無いのかもしれませんが、本当に「問題ない」のでしょうか?

毛玉をほとんど吐かず(胃の中にも毛玉は無く)、便に毛が常に大量に含まれるわけでもなく、便通も良い猫が実際に普通にいるとすれば、何が違うか考えてしまいます。

 

「うちの猫ちゃんが、できるだけ毛玉を吐かずに過ごせればいいなあ・・・」と、
多くのご家族が多少なりとも考える事も、自然にあると思います。

 

そこで、次の事を改めて考えてみましょう。

 「毛玉の嘔吐」の原因やそれに関係することについて

 

1) 「毛繕い」

毛繕いは生理的な行動ですが、「過剰」になって無いか?

毛繕いが過剰になっている場合、当然飲み込む毛の量が増えるので、毛玉が増えることになります。
なぜ過剰になるかを考えた場合、ネットで上げられていることも含めて、次のことを考えてみます。

・ ストレスがあるから?

・ 病気があるから?

 

ストレスの前に、病気の事を少しだけ確認しておきましょう。

・ アレルギーがあるか?

確かに、  アレルギー → 痒い → 舐める → 毛を多く飲み込む

と言う事になると思います。

このコラムでは、あえて猫のアレルギーについて詳しくは言及しませんが、毛玉を吐くことがアレルギーに関連した問題であれば、その猫のアレルギーの問題をもう少しよく考えて、対処する必要があります。

(因みに、「猫の痒み」は非常に複雑で、そこに精神的関与が無いかどうかも・・・)

 

・ その他の病気はないか?

消化器の問題、泌尿器(主に下部尿路)の問題、筋骨格系の問題、脳神経系の問題

これらの病気は多くの場合、毛玉を吐く以外に他の症状を伴うことが多いので、ここでは詳しく触れませんが、念のため病気がないかどうかも確認しておく必要があります。

 

上記の、アレルギーやその他の病気は、とりあえず無いものとして考えた場合、
それでは、ストレスはあるのか?

猫が何かしらのストレスを感じた時に、自分の身体を過剰に舐めることがあることは、教科書的にも示されています。

それでは、猫にとってのストレスとは何か?
また、「ストレス」と一言で言ってもかなり漠然としていて、ご家族が簡単には思いつかない事も多いと考えられます。

そこで、家の中で人と生活している猫が、何気ない日常の中で「ストレス」と感じている事がないかどうかという事を改めて考えてみる必要があります。

 

そもそも猫にとってのストレスの原因は何か?

猫にとってのストレスは、ある特定の事柄だけが関係することもありますが、まずは、現在の猫の生活環境をじっくりと見直し、確認する必要があります。

 

「猫にとってのストレス」は、過去コラム

http://www.sakura-ahp.com/2020/02/04/2716/

http://www.sakura-ahp.com/2020/03/01/2753/

http://www.sakura-ahp.com/2020/03/28/2779/

 

を、ご参照ください。

 

ストレスと環境の見直しは、猫の毛繕いが過剰になってないかどうかを考える上で、とても重要な事です。

 

 

2) 猫の被毛に対する、日頃のお手入れについて

猫のストレスの有無に関わらず、毛繕いによって飲み込んでしまう毛の量をできるだけ抑えるためには、次の点に注意する必要があります。

 

○ ブラッシング

・ 長毛の猫は、基本的にブラッシングをできるだけ習慣的に行う必要があります。

ここでは長毛の猫の起源や性質についてのお話は省きますが、長年に渡る人との生活の中で、改良?も加わり生まれてきた「長毛」であるとすると、グルーミングに多少なりとも人が関わる必要があるようです。

* ブラッシングについての注意点

・子猫の時からできるだけ慣らして行く。

・子猫から慣らす場合も成猫から慣らす場合も、できるかぎり猫に不快感を与えないようにする。
(ブラッシング自体がストレスとなってしまうようなら、無理強いはできません)

・毛がよく取れるとされる、細い針金で出来ているスリッカーブラシやラバー製品は、猫にとっては皮膚に当たった感覚や、必要以上に毛を引っ張られることで、不快感が増し嫌がることが多いようです。基本的にはお勧めしません。大人しくブラッシングをさせていても、只々じっと耐えているかもしれません。

・「毛がゴッソリ取れる」とは行かないかもしれませんが、豚毛や馬毛の獣毛ブラシがお勧めです。
(ご自身の頭を撫でてみて、痛くないものがお勧めです)

 

○ 毛玉対策にシャンプーは必要か?有効か?

猫の被毛や皮膚は、一般的に考えられているよりもかなり複雑で多くの仕組みが備わっています。
猫の被毛は主毛の他に複数の柔らかい副毛が生えています。また顔や前肢に生えているヒゲ(震毛)の他に主毛や副毛以外に全身に感覚毛が生えています。

皮膚は、古い角質や皮脂と常在菌がバランスを保ち皮膚の健康を守っています。汗腺は人の様に体温調節の働きはなく、複雑な役割を持ち、皮脂腺と共に皮膚の健康に欠かせません。

皮脂腺や汗腺からは猫のコミュニケーションに欠かせないフェロモンが分泌されています。

猫は本来、このような複雑な構造や働きを持った被毛や皮膚を、「専用のブラシ」とも言える複雑な構造を持った舌で、「巧みに舐める」事によって、最適な状態に保っています。

以上の事を踏まえて考えると、安易にシャンプーをすることが、本当に毛玉対策に有効かどうかをよく考える必要があります。

たまにSNSに「お風呂の楽しさを知ってしまった子猫」など、湯船に浸かって気持ちよさそうにしている投稿を見かけることがあるかもしれません。これはやや特殊なケースと捉えて頂き、ほとんどの猫は濡れる事を嫌う性質を持っているとご理解下さい。

これらのことから、余程事情があって身体が汚れてしまった時以外は、猫のシャンプーはお勧めしません。

同様に、「ペットの清潔シート」や「ウォーターレスシャンプー」などの製品を使って拭き取る事もお勧めしません。

 

 

ここまで、猫の毛玉の原因となっている毛繕い、それに関係するストレスの問題、
また、飲み込む毛を減らすための被毛のお手入れについてお話をしました。

 

次回は、毛玉対策として一般に多く言われている、
猫草や毛玉ケアフード、毛玉ケアおやつ、また薬やサプリメント等は有効かどうかについて、
お話をします。

ページトップへ戻る