高齢猫の認知症(高齢性認知機能不全)について〜快適な生活のために ①|ふじみ野市|さくら動物病院

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コラム

高齢猫の認知症(高齢性認知機能不全)について〜快適な生活のために ①

コラム 

突然ですが、

10歳以上のねこちゃんについて、次の事で当てはまる事はありませんか?

 

今までに無く、鳴くことが増えた

性格が変わったように感じる

寝ている時間が変わっている

トイレ以外場所で排泄する事がある

部屋の隅や家具の間など、狭いところでじっとしている

食器の位置を変えても、以前の場所で食事を待っている

今まで無かった行動が見られる

食事の好き嫌いが多くなってきた

今まで怖がったりしない事を怖がったり、何か刺激に対して敏感に反応する事が増えた

今までしなかった場所で爪をとぐ

今まで欲しがらなかった時間に食事を催促する

歩き方が変わった気がする

若い時から気になっていた行動が、最近頻繁になったり、ひどくなってきた

 

以上の中で、1つでも当てはまる事があれば、何かしら身体の変化が出ているかもしれません。

本コラムの表題から言えば、上記の項目に当てはまる事があれば、「認知症」なの?
と、思われるかもしれません。

それはまだ早いので、次の事を考えて下さい。

 

確かに、認知症の可能性はありますが、そのまま認知症に当てはめる事は出来ません。

なぜなら、当然、老化に伴う身体の変化である事もありますが、一方、老化に伴う変化のみと思っていたら、実は隠れた病気の症状である場合があります。

まずは、老齢猫の身体の変化として、どのような身体の変化が現れるか、見られるか、確認してみましょう。

 

・老齢的な変化として

運動器: 運動器機能の低下

感覚器: 視力、聴力が衰える

皮膚被毛・爪: 皮膚の張りの低下、被毛が粗くなる、爪が太くなる

口腔・歯: 口臭、見た目の汚れ、歯ぎしり

消化器: 食欲の変化、便の臭いや硬さの変化

腎泌尿器: 飲水の変化、尿の量、回数、臭い、色の変化

心臓・呼吸器: 胸の動きの変化、咳き込む、動き回ることが少なくなる

脳神経: 目立った変化は無いが、行動全般が遅くなる

 

以上の様な事が、加齢による身体の変化として見られる事があります。

 

次に、加齢による変化の様に見えて、実は病的な症状の表れである場合、どのような病気に関連した症状かを見てみましょう。

 

・病的な変化の原因として考えられる事
(ここでは、一般的に比較的多く見られるものを上げています)

運動器: 変形性関節炎、変形性脊椎症、等

感覚器: 白内障、網膜疾患、視覚の低下や失明、聴力低下や喪失、等

皮膚被毛・爪: 他の疾患に関連した、グルーミングの低下・過剰・脱毛、爪とぎ減少、
皮膚の抵抗力低下による感染、腫瘍、等

口腔・歯: 歯周病、口内炎、腫瘍、等

消化器: 消化吸収能力の低下、腸内細菌叢の変化、肝胆疾患、膵疾患、腸の炎症性疾患、
腫瘍、病的な便秘症、等

腎泌尿器: 尿路感染、尿石症、腎臓病、腫瘍、等

心臓呼吸器: 心筋症、慢性気管支炎、腫瘍、等

脳神経: 感覚異常、運動神経障害、てんかん、脳血管障害、腫瘍、高齢性認知機能不全症、等

代謝性・内分泌疾患: 糖尿病、甲状腺機能亢進症

痛みや炎症を伴う疾患: 上記の様々な疾患に関連して痛みを伴うもの

問題行動: 若い時からあった問題行動の悪化、等

 

以上のように、老齢期の猫にこれまで無い行動や身体の変化が見られた場合、
「年のせい」なのか、「病気」の関連がないか、よく考えることが重要です。

この時、当然老齢的な変化と病的な変化が全くの別のことではなく、重なって現れる事になります。

 

いずれにしても、動物病院で診察を受けて、病的な問題はないか? 老齢期の変化だけではなく、
認知機能不全症の状況があるか?を確認することをお勧めします。

本コラムの初めの「10歳以上のねこちゃんで当てはまる・・・」の項目ですが、実際には他にも様々な変化が見られる事が多く、猫を診察させて頂き、猫の様子とお家での詳しい生活の状況を伺うことで、「認知機能不全」であるかが分かります。

その上で、病的な変化の中には、病院での薬の処方や処置によって改善出来る物もあります。
また、老齢的な変化を伴っている為に完治は難しく、対処療法や緩和しながらその問題と上手く付き合って
行く場合があります。

 

ここで皆様に確認して頂き、考えて頂きたい事が有ります。

老齢期の様々な状況にある猫にとって、特に高齢性認知機能不全症の猫においては、症状の改善や緩和のために、より快適な生活環境で過ごす事がとても重要だという事を。

 

猫にとって快適な環境づくりに必要な事を、確認してみましょう。

1 安全で安心できる場所を用意する

2 猫にとって重要な必要物資を複数用意し、環境内に複数箇所、それぞれ場所を離して設置

3 遊びや捕食行動の機会を与える

4 好意的かつ一貫性のある予測可能な、人と猫の社会的関係を構築

5 猫の嗅覚の重要性を尊重した環境

 

これは老齢期に限ったことではなく、全ての猫に必要な事です。

過去のコラムにもまとめてあるので、参考にして下さい。

 

猫の高齢性認知機能不全と付き合っていくためには、環境づくりは欠かせません。

全てを完璧にする事は出来ませんが、それぞれのお家でできる対処を、その猫に合ったやり方を考えてやる事で、少しでも気持ちよく過ごせれば良いなと願います。

上記の1〜5だけでは、よく分からない事が多いと思います。

次回のコラムでは、特に老齢期の猫に合わせた環境づくりを、具体的にお伝えします。

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